小さな花
第2章 Not a boyfriend
結局、カズヤくんはそれからもほぼ毎日やって来て「電話してね」と言う。
いい加減、まったく連絡しないのも失礼な気がしてきた。
それにこの町には友達もいないし、シンくんといるとき以外は退屈なんだ…。
最初にメモを渡されてから2ヶ月も経ってしまったけれど、その日わたしはカズヤくんに電話をかけた。
今夜すぐに会おうと言われ、やっぱりぐいぐい来るタイプだなぁと再確認。
その夜は、ちょっと小洒落たおでん屋に来ていた。
「カズヤくんって…ボーイさんなの?」
「ははっ!やっぱそう見える?」
「んー…あんまりよく分からないけど。」
「会社員だよ?一応ね(笑)」
「一応?」
聞けばカズヤくんは広告代理店で働いているそうだ。
でも、扱うのは水商売。
毎月発行されているフリーペーパーは、私も見かけた事がある。いつも煌びやかなキャバ嬢が表紙で微笑んでいるやつだ。
カズヤくんは毎月写真撮影をしたり、企画を考えたり、女の子へのインタビューをしたり、いろんな業務があるみたい。
どうしても水商売と時間帯を合わせることになる。
「それで、仕事は夜…ってことかぁ」
「そうそう。」
もしや水商売への勧誘?ともよぎったけれど、こんな童顔
の冴えない女をハンティングするわけもないか。と思い直す。
「どうして声かけてくれたの?」
「えっ?あはは!だってせいらちゃん、可愛いから。モテるでしょ?」
力強いその視線は私の目を射た。
…
カズヤくんに誘われて彼の部屋へ行った。
「せいらちゃん、チューしてもいい?」
「う、うん…」
久しぶりの異性との接吻は、なんだこんなものだっけ…と思うような虚しいものだった。
仮にもこのイケメンとキスしたのに、なんの感動もない自分に驚いた。
それでも、しっかり彼に抱かれてしまった。
なかなか濡れなくて、カズヤくんが指先に唾をつけたことだけが鮮明に残っている。
そして彼は朝にかけて何度も私を求めた。
ああ、また1から恋愛するのって…面倒くさいな。
ああ…お股が痛い。
疲れたな…。
正直カズヤくんとは一度限りかな、と思っていた。
だけど、それからも彼は熱心に弁当を買いに来た。