小さな花
第4章 I'm happy with my life now
今まではお弁当が出来るまでおしゃべりをしていたシンくんと私のルーティンに、加奈子ちゃんが加わった。
「ほんとピュアだわ、加奈子ちゃん」
「そんなことないですよ」
「そのわりに、大人っぽいしな。」
シンくんは私にいじわるな目配せをしながら、わざと加奈子ちゃんを可愛がる。
「はいはい、どうせ私は子供っぽいですよぉだ」
「えぇ~?そんなことは言ってないよ、せいら先輩もかわいいよ?ねぇ、加奈子ちゃん」
「わざとらしいーっ!」
…分かってるよ。加奈子ちゃんが素敵なことだって、私が子供っぽいことだって、言われなくても…よく分かってるよ。
私のことは呼んだことないくせに、加奈子ちゃんには優しく名前を呼ぶんだ。
まさに子供のようにすねている自分が情けない。
「有馬さんって素敵ですよね。お2人、仲良くてうらやましいです」
シンくんが去ったあと、加奈子ちゃんがはにかんで言った。
「仲良くないよ。いじめだよ、これは」
…うまく笑えているか心配になる。
いつもみじめな気持ちになるので、私はだんだんと厨房でセツ子さんの手伝いをするようになった。
加奈子ちゃんとシンくんが喋っている間、私はわざと忙しそうにした。
もう、私とシンくんのルーティンは無くなったんだ。
そして金曜日の閉店間近になると今度はカズヤくんがやってきて、加奈子ちゃんとお喋りをする。
関係をやめるなんて絶対にいやだ、なんて言っておきながら、まんざらでもない様子で加奈子ちゃんに笑いかけている。
申しわけ程度に、厨房にいる私に手を振って帰っていくカズヤくんは、最近メッセージを送ってくることも減った。