小さな花
第4章 I'm happy with my life now
「水商売の子はみんなアスクで家を探すからさぁ、シンちゃんはある意味有名人だけど…。浮いた噂は聞いたことない。もしかしてゲイだったりして?」
プッと笑いながら言うタケちゃんに、私もつい吹き出した。
しばらく談笑しお酒も進んだ頃、カウンターで肩を並べていた私たちの背中を同時にポンと叩くものがあった。
「「えっ?」」
2人で振り向くとそこにはシンくんがいて、ついさっきまで噂していた人物がここにいることを驚いた。
「噂をすれば影…ね。」
タケちゃんが言い、「どうせ2人して俺の悪口言ってたんだろ~」とシンくんは私の隣に腰かけた。
「そんな事よりねえシンちゃん、いい加減、せいらにチビとかブスとか言うのやめなよ」
「ぶっ…いや、そこまでは言ってね―ぞ?!」
…確かにそこまでは言われてない。
「あははっ。」
なんだか笑えてきた。どうでもいい気分だ。
楽しければいい。これからも、こうして仲良くやれればそれでいい。
思えば、シンくんと並んでお酒を飲むのはまたまた久しぶりだった。
単純に嬉しくて、ついお酒が進んだ。
帰り道、以前のようにシンくんがアパートまで送ってくれる。
「うちの倉田がお前にほの字みたいだな」
「ほの字って…古臭すぎない?」
たしかに、倉田くんがBLUEに来てくれたあの日は「素敵です」なんて言われて少し舞い上がった。
それから、たまにお弁当も買いに来てくれるけれど、べつにそれ以上はない。
「…あの黒服くんから、今度はピュアな倉田に乗り換えるのか。お前もなかなかやるね。ククッ」
「そんなことしないよっ。シンくんじゃあるまいし。」
シンくんは少し黙った後で、
「あのとき ”彼女の1人にして”じゃなくて”私だけを彼女にして”ってお前が言ってたら、考えてやったのにな。いいの逃したな~」
と嘲笑気味に言った。
なにそれ…。
せっかくどうでもいいって気分になれたのに、ずるい。