小さな花
第4章 I'm happy with my life now
”久しぶりにどこか、出かけませんか?”
カズヤくんにメッセージを送り、狭い世界で生きているなぁとしみじみ感じた。
今、私の世界はたった数人で構築されている…――。
翌日の夜、カズヤくんは車で迎えに来た。
「えぇ?車持ってたんだ…」
「一応ね。実家に置いてきたり、こっち持ってきたり。」
大きな四駆の助手席に乗り込むと、すぐに発進した。
「連絡くれてめちゃくちゃ嬉しい」
カズヤくんはそう言って、私の手を握る。
右手だけで器用に運転しながら、つないだ左手は決して離さなかった。
このあたりでは有名らしい夜景を見に行き、連れてくるのは私が何人目なんだろうと考えた。
帰り道で通りかかったラブホテルにも、カズヤくんはきっと行ったことがあるだろうと思った。
「なんで連絡くれたの?」
信号待ちで、彼は私の髪に触れた。
「…正直、ね。」
「うん?」
「私、この町にほとんど友達もいないし…1人でいるのも退屈だし、寂しいし、」
「うん」
「だからね、カズヤくんが一緒にいてくれて良かった。ありがとう」
「なんで終わりみたいな言い方するの」
「そばにいてくれる人なら誰でもよかったのかもしれない」
「…それでもいいよ。それでも俺は会えてうれしい。」
「…」
「せいらちゃん――」
信号が青に変わった。
私のアパートに着くまで、なにも話さなかった。
「真剣に付き合いたい。」
カズヤくんはまっすぐ私の目を見て言った。
無言のまま、最後に軽く手を握り合って別れた。
…
カズヤくんと夜景を見に行ってから、1ヶ月も経たないうちに知ってしまった。
「篠原さんに食事に誘われてて…」
篠原さんって誰?と思ったが、少ししてカズヤくんの名字がそれだったことを思いだした。
「あ…そうなの?」
「はい。結構強引で…あはは…」
苦笑しながら加奈子ちゃんは言い、実はこの”かどや”で働くようになってすぐにお誘いがあったと教えてくれた。
「最近もしつこいの?」