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小さな花

第5章 Kiss


「今日、僕と2人じゃ嫌でしたか?」


「えっ?」


タケちゃんがトイレに立つと、倉田くんが申し訳なさそうに言った。


「そんなこと全然ないよっ!今日ねお酒飲みたかったから、お誘い嬉しかった!」


「社長とは2人で飲みに行きますよね。やっぱりせいらさん、…」


「――ちがうの!いや…違わないんだけど…。もう、終わりにしたの。」


「終わりに?」


「私、たぶんシンくんを……好き、だった。」


倉田くんは黙って、一度だけ深くうなずいた。



「終わり、っていうのは…」


「…恋愛とかね、よく分かんないし。怖いし」


「……僕もそう思います。」


タケちゃんが戻ってきて、また別の話題へと変わった。


結局この日倉田くんのことは詳しく聞けないまま、解散した。








「もうすぐ誕生日なんだけど?」


いつものようにお弁当を買いに来たシンくんが私をじろりと見て言った。


「そうなの?」


「あーあ、地酒の店いきたいな〜」


「…加奈子ちゃんと行ったんじゃないの?」


「行ってねえよ。お前が地酒すきだからせっかく声かけてやったのに。あんなふうに逃げられてやりづらかったわ馬鹿。」


「うぅ…。」


あの日の帰り際、加奈子ちゃんが嬉しそうにしていたのは気のせいだったのだろうか。


2人が飲みに行ったわけでないことを知って、嬉しいような、嬉しいと思う自分が嫌なような、複雑な気持ちになった。




翌日は土曜日で、私はBLUEへ出勤する前に商店街をぶらぶらと歩いた。


シンくんへの誕生日プレゼントを選ぶつもりだったのだけど、なにがいいのかさっぱり分からない。


「お、せいらちゃん」


声をかけてきたのは不動産屋のおじいさんだった。


この町に来て、一番最初に入った老舗の不動産屋。

あれから顔を合わせるたびに挨拶する仲になっている。


「あ、おじさん!」


「買い物かね?」


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