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小さな花

第1章 Moegi Station Shopping Street


「勤務先が無いと、基本的には審査に通らないんですよね…。なのでハードルを下げるために、弊社の管理物件をご紹介しますね!…――」


結局、アスクが管理するアパートを3件紹介してもらった。


それでも一応審査はあるということで、倉田さんは私の身分証やなんやかんやをどこかにFAXした。





1時間も待った。


そして、その結果は「否」だった…


「審査はわたくしが関与できない部分でして…大変心苦しいのですが…――」


倉田さんは申し訳無さそうに頭を下げた。


「いえっあの…出直しますので。大丈夫です…っ」


丁寧に、最寄りのリーズナブルなホテルまで紹介してくれた。無職という現実が身に沁みる…。





日が暮れてきた商店街は、夜の顔をのぞかせはじめていた。


昼間には気付かなかったあやしげなマッサージ店や、キャバクラの看板が目につく。



やっぱり、先に仕事を探さないと駄目か…


結局、なにも決まらないまま1日が終わってしまう。


がっくしと肩を落とし、教えてもらったホテルへ歩いた。







チェックインを済ませ、再び商店街へやって来た。


もう腹ペコだし、お酒も飲みたい気分だ。


ふらりと入った焼き鳥屋はカウンターのみの小さなお店だった。


一番奥に座り、生ビールと焼き鳥数本、それからたこわさび。


ぐびっと冷たいビールが喉を通ると、虚しさが湧いて来た。



店内は少しずつ、おもにサラリーマンで混んできた。


私の隣にも新たな客がやってくる。


「生ね」


慣れた様子でビールを注文する声に、思わずガバっと顔を見てしまった。


酒焼けした、あの声だったから。



「…っ?!」
男は驚いて私を見、それからいたずらな笑みを浮かべた。


「さっきはどうも。」


「ど…どうも…」


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