テキストサイズ

小さな花

第5章 Kiss


「だってさぁ。やっぱり、女って綺麗とか可愛いとか言われたいものでしょ?私だって少しくらい…」


「少しくらい何?」


「…女として見られたいじゃん…ねえ?」


「ねえって、知らんけど俺は。」


「むぅ…冷たいね今日も。ふーんだっ。」


グラスのフチに塩のついたカクテルをごくりと大きく一口飲んだ。



「モテたいの?」


不意にシンくんの指が唇に触れ、ついていた塩を払い落とした。


「えっ…ーーー?」


戸惑いで目が泳ぐ。


「そんなに男にモテたいのかって聞いてんの」


今度は顎を持ち上げられた。


キャンドルの灯りが反射するシンくんの瞳が、暗闇で私に突き刺さる。



「その…手始めに……」


「…は?」


「まずは、シンくんに…思われたい」


「なんて?」


「えと…綺麗だなとか、良い女だなとか…」



「キスしてえな〜。とか?…ふっ」


やけに低くて色っぽい声音でシンくんがささやく。



「うん…そう…。」



胸の鼓動が店中に響きそうなほどドキドキする。


見つめ合ったその刹那



―――カランコロンっ!



店の扉が開く音がして、とっさに私たちは入り口のほうを見た。


ああ、心臓が壊れるかと思った…。



入ってきた人が私たちの目の前を通るとき、突然声がかかった。


「あれ?シンか?来てくれたのか!開店祝いの花だけ贈りやがって、いつになったら顔出してくれるかと待ってたんだぞ、おい」


聞くところ、男の人はこの店のオーナーらしかった。


「ういっす。」


「ゆっくりしてけよ、サービスするから」


夜の匂いをまとう女の子を2人つれて、オーナーは奥へと消えていった。



「シンくん?嘘ついたね?」


「店知ってたのは嘘じゃねえもん」


「ここ…初めて来るの?」


「そうだけどそれが何?」


恥ずかしさを隠すような強気の台詞になんだか嬉しくなり、へへっと声が出た。



「それよりお前、さっき…」


胸が高鳴る。


続きをするのかな…



ストーリーメニュー

TOPTOPへ