小さな花
第5章 Kiss
「さっき…何?」
「俺のこと、手始めにって言ったな?」
「え」
「失礼なやつだな、こんな良い男を手始めだぁ?」
「ちがうのっ、つい…びっくりして…」
「んじゃ訂正してやり直して。」
「えぇ…。」
視線とともに、無言の圧が私を襲う。
「えっと………シンくんに…」
「うん」
「良い女だなって…思われたら、嬉しい」
「…ん~?」
「い、良い女って思わ…れたい」
「はい、よくできました」
え、おわり…??
さっき見つめ合ったのは私の勘違いだったのか…
まぁ、そうだよね。
発表会みたいなことさせられたよう…あぁ、恥ずかしい。
2杯目のカクテルをぐびりと大きく飲んだ。
唇を這ったシンくんの指先の熱、早く冷めて…。
「あ…。私、分かった!!!」
「何が分かったんだよ?」
「偵察、でしょ?!」
「…はぁ??」
「今度ここに女の人つれてきたいから、下見に来たんでしょうっ!ふふん、お見通しなんだから!」
私はエッヘンといった調子で鼻息を荒げた。
シンくんは ふん、と鼻で笑い、ロックのウイスキーを飲み干した。
「それよりお前、倉田とデートしたって?加奈子ちゃんに聞いた」
「デート?してないよ。タケちゃんとね、3人で飲みに行ったの」
「ふーん?」
「気になる?へへっ」
「全然。」
事も無げにウイスキーをおかわりするシンくん。
「んもう。分かってたけどー。」
「倉田に聞いたろ?孤児院のこと」
突然のことに驚きながら、私は頷いた。
「あいつ律儀だからさぁ、わざわざ報告してきたんだよ。言っちゃったって(笑)」
ケラケラ笑うシンくんに、私はどう反応していいのか分からなくなった。