小さな花
第5章 Kiss
なんとなく気まずくて、それから何日も私はセツ子さんの手伝いをした。
シンくんが来ていることに気づかないふりをして…。
…
やっと落ち着いてきた翌週の日、倉田くんからお誘いがあった。
「今回はちょっと…その…話したいことがあって」
店を閉めてすぐに待ち合わせ場所に向かうと、倉田くんがベンチに座っている。
「ごめんね、お待たせ!どこ行こうか?」
結局いつもの焼き鳥屋に入った。
今日はなんだか空いている。
いつもどおりに乾杯すると、彼のほうから話し始めた。
「あの、すみません、急に」
「ううん。なにかあったの…?」
倉田くんは少しうつむき、呼吸をととのえているみたいだった。
なんだろう、告白なんかとは違う雰囲気を感じる。
「あの…」
「…うん?」
こちらまで緊張しながら返答を待つと、むりやり踏ん切りをつけるように倉田くんは勢いよく言った。
「た…タイプなんです!せいらさんが…!!」
「え…えぇ?」
「あっええと…違う、順番間違えました。僕…その…」
「…???」
「じじじ実は!僕、お…男の人が…好き…なんです…」
ものすごく驚いた。
今まで彼がゲイだとは少しも感じたことがなかったし、なんなら私のことを好いてくれてるのかもと思っていたほどだ…。
勘違いだった…。
「そうだったのかぁ…」
大きく驚いた後、自分を落ち着かせるように言った。
「それで、せいらさんがタイプっていうのは…僕、女の人みたいになりたいなっていう…思いがあって…」
聞けば、倉田くんは物心ついた頃から男子が好きだった。
お化粧や女装に興味があるけれど誰にも言えなかった。
こんなふうになりたいと思いながら女性雑誌を買ったりしていた。
そして理想のドンピシャの顔が私…だと言うのだ。