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小さな花

第7章 Eve night


「そろそろ行こっか」


22時を少し過ぎ、会計を済ませて外へ出る。


「楽しみができてうれしいです」


「タケちゃんにも声かけておくね」


お喋りしながら大通りに出ると、「あっ…!」と倉田くんが小さく叫んだ。


「どしたの?!」



「あそこ…ほら、あそこです」


言われた先に目をやると、見慣れたスーツの男が煙草をふかしながら歩いている。シンくんだ。



「あ、シンく…ん」

――すぐに、すり寄る由梨さんも目に入ってきた。



2人はなにやら談笑しながら歩き、時折由梨さんが「あはは」とか「やだー」とか女の声を上げている。



「飲みにでも行ってたのかな」


言いながら、さっき倉田くんに聞いた”シンくんが由梨さんを煙たがっている”という言葉に苛立ちを覚えた。


2人はずいぶん楽しそうに見えるから…。


「そうですね、たぶん…。声かけますか?」


「…ううん。やめとく。」


「はい…」


「このあと一緒にホテルとか?」


「まさかっ!ないですよ。」


言い切る倉田くんを目にしても、私の中に不穏なものが渦巻いていくばかりだった。


ほんの数十メートルむこうにいるシンくんには、あの朝にした私とのキスなんて少しも残っていないみたいに見える。







翌週、シンくんが弁当を買いにやってきた。


「う~、さむ。ホイコーロー」


「はい。」


「なんだよ?ぶすっとしちゃって」


「べつに?」


「言えって、きもちわりいから」


一瞬むかっとして、思わず言った。


「この間、ずいぶん楽しそうにデートしてたの見ちゃった」


「…は?」


加奈子ちゃんは心配そうに私たちのやりとりを見ている。


「やり直す気になったの?由梨さんと」


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