小さな花
第7章 Eve night
「何言ってんのお前。…あ~、先週のあれか。ラーメン食いに行ったやつ」
聞いてもいないのにシンくんはそう説明した。
「あ、もしかしたら私も前に見かけたのと同じ人ですかね?綺麗な人」
加奈子ちゃんがその場を取り繕うように言い、私はうなずいた。
「そうそう。」
「あの人、有馬さんの彼女なんですか?」
私が何か言うより先にシンくんは顔の前で手をふった。
「ちがうちがう。まぁなんちゅーか、腐れ縁。つきまとわれてんの(笑)」
ククッと笑いながら冗談めかして言うシンくんにホイコーロー弁当を手渡し、厨房へと引っ込んだ。
…
やってきたイブの夜、私は待ち合わせ場所に急いでいた。
「ごめん、遅れちゃって…!」
すでに待っていた倉田くんとタケちゃんは、両手をポッケに突っ込みながら肩をこわばらせている。
「雪でも降りそうだね。そしたら、ホワイトクリスマス~。」
とくに嬉しそうでもない口調でタケちゃんが言い、倉田くんがクスっと笑う。
入り口でカズヤくんからもらったチケットを見せると、飲み放題の印であるらしいピンク色の輪っかを渡された。
「これを手首につけておけば、飲み放題ってことなんだね」
3人そろって中へ入ると、ゆったりしたR&Bの曲が心臓を震わせた。
「おお…やっぱり、こういうところは低音がすごいですね」
好奇心にあふれた様子で倉田くんが言う。
「クリスマスだし、パーっと飲もうよ!」
タケちゃんの提案でテキーラをショットで3連続も飲んだ。
喉が熱く、まぶたもポカポカしてくる。
「こんな感じ、ずいぶん久しぶりだな」
「ね。若返るね~♪」
私に答えるとタケちゃんは楽しそうに小躍りした。
少しして、倉田くんが突然言う。
「タケさん!」
「なあに?どしたの急に」
「ぼ…僕、実はゲイなんです!!」