小さな花
第7章 Eve night
勢い任せに言ったのがありありと分かった。
「…僕に言ったってことは、せいらはもう知ってたの?」
「う、うん。」
タケちゃんは倉田くんがゲイと言う事実よりも、どうして僕には言ってくれなかったの!という点を喚いた。
「ま、でも…大地がゲイってことは、僕の希望も少しはあるのかな?」
色っぽい視線を倉田くんに投げながら、タケちゃんはまたテキーラを舐めた。
――「ういっす!」
突然肩を叩かれ、振り向くとカズヤくんがいた。
2人にカズヤくんを紹介し、改めて4人で乾杯するとカズヤくんが私の耳元で言う。
「せいらちゃん、男2人もつれてきてビックリした。隅に置けないね!」
「ふふっ。」
「でも俺分かっちゃった。この2人、ゲイでしょ?」
「どうして分かったの?」
こそこそ話し続ける私たちに向かって、タケちゃんが「踊ろうよ」と陽気に言った。
フロアに出て体を揺らすと、暗闇の中でなんだか良い雰囲気のタケちゃんと倉田くんが見える。
スッと腰を触られたかと思うと、隣でカズヤくんが笑っていた。
「ね?結構いいでしょ、このイベント」
「うん。懐かしい曲ばっかりで嬉しい」
カズヤくんは満足そうにニッと笑い、またお酒を飲んだ。
馴れ馴れしく腰に回された手に、不意にシンくんを思いだす。
イブの今夜、シンくんはどうしているだろう。
無性に会いたくなってしまう。
「ちょっとトイレ」
カズヤくんの腕から逃れてホッとしたのも束の間、フロアに出るとカズヤくんが待っていて、ぐいぐいと腕を強い力で引っ張られた。
「ちょっ…どうしたの?!」
「いいから、こっちこっち」
なんだかすごく楽しそうだ。
なにか面白いものでもあるんだろうか。