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小さな花

第1章 Moegi Station Shopping Street


「あっはっはっは!キミ、面白いわぁ。ああ、笑った笑った…ククッ」


有馬さんは私の計画を聞くと何度も笑った。


「なにも面白くないですよっ!」




「どうすんの?これから」

「分かんないです…。」

「引越し、やめるの?」

「かもしれない…ですね」


もうすでにダンボールにまとめてある荷物を思い、ため息が出る。



「弁当屋で働く気、ない?」

またいたずらな笑みで有馬さんは私を見た。


「べ…弁当?」

「そ。とりあえずだよ、とりあえず。」


「どこかあてがあるんですか?」

「うん。ガキの頃から世話んなってるおばちゃんがやってんの。この商店街で。」

「はぁ…そうなんですか」


「明日行ってみなよ。かどやって店だから」

「かどや…。」



正直、ウェブデザインの仕事しかした事がない私は気が乗らなかった。

そこまでしてこの町に来る理由だってない…




「それとも元カレがいる都内に戻りたい?ふふっ」


おちょくるように言う有馬さんは「飲むだろ?」とビールを2つ注文した。


「都内には…戻りたくない…」


「うん。…きなよ、こっち。結構おもしろいとこだよ。」



タバコをはさんでいる指がしなやかで、それでいて男らしい。

結婚指輪は…してない。


ついおかしな確認をしてしまい、すぐに気付かれてしまった。


「ククッ。独身だよ。」

「いっいやあの…べつにそんな…っ!」


「惚れないでね?俺、未成年みたいな子に欲情しないから。」

「ほ…っ惚れませんよ!!」

「ふ~ん?」


たいして気にもしない素振りの彼に、大きな余裕を感じる。


お金があって、女にモテる男はこういうもんなのか…
つい納得してしまった。


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