小さな花
第1章 Moegi Station Shopping Street
未成年みたいだという言葉に、実はちょっぴり傷ついてもいた。
今まで付き合っていた人にも、童顔すぎて欲情しないと言われたことがある。
逆に、すんごいロリコンもいたっけ…。
老けてるよりマシだよ!って言う友達はすごく色っぽくて、いつも羨んでいた。
「どした?目がすわってる。酔った?」
「どうせ…どうせ私は子供っぽいです」
「え、なに急に(笑)トラウマでもあんの?」
「…。」
「おい、大丈夫か?」
彼の手が私の肩を掴み、そっと揺れる。
「私だって…もっと色っぽく生まれたかったよ…――」
この期に及んで涙がこみ上げてきた。
「なんちゃって、…私、トイレ!」
有馬さんに悟られまいと席を立ち、トイレへ駆け込んだ。
今日初めて会った人に、なんてめんどくさい女っぷりを発揮してしまったんだろう。
お酒でグラつく足元をぼんやり眺めながら、しばらく便座に座っていた。
…
「おいおい、やけ酒か?」
トイレから戻り、もう何回ビールをおかわりしただろう。
「べつに、付き合ってくれなくても結構ですよう。」
そもそも、こんな端正な顔立ちの高身長男性が隣にいるなんて私としても違和感がある。
さっさとお店を出てくれればラクなのにな…。
「まあまあ。寂しいなら慰めてやるからさ」
この人のイタズラ顔にも慣れてきた。
「いろんな人に言ってるの、バレバレですけど」
「あはは!バレちゃあしょうがない。」
この会話だって、すぐに忘れてしまうんだろう。
私には初めての町、初めての店…でもこの人にとっての今は、たいした出来事でもなんでもない。
ところどころに垣間見える適当さで、そう察することができる。