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小さな花

第10章 Accident and Incident


不吉な予感で背中に汗がつたう。


一瞬の間の後でメッセージを確認する。


[すぐ連絡下さい!]
[せいらさん、すぐに連絡欲しいです]


内容だけでは状況が分からなかった。


着信の時間は今から1時間も前のことで、仕事中だった私は全く気付かないままだった。



すぐに倉田くんに発信する。


「もしもし、せいらさん?」


ものの数秒で電話口に出た倉田くんは、思いのほか落ち着いた様子だ。


「ごめんねっ仕事中で、気付かなくって、…なにがあったの?!」


「実は…―――」



この日、シンくんと倉田くんは新しく管理する物件を見に愛知方面へ向かっていた。


途中のサービスエリアでトイレから出てきたシンくんに向かって、暴走したバイクが突っ込んだとの事だった。



「そ、そ…それでシンくんはっ?!大丈夫なの?!」


「はい、命に別状はないってお医者さんが。意識もあります。」


大きな安心感で涙が出そうになる。


「よかった…――――」


「すみません、せいらさんに連絡を入れたときは僕もすごく動揺していて…」



とにかくすぐに行くからと病院名を聞き、電話を切る。


セツ子さんにわけを話すととても心配した様子で、当然のように翌日は休みをもらえた。


落ち着いて来るようにとシンくんからの伝言を聞き、私はなんとか冷静さを保ちながらシンくんのマンションへ行く。


着替えを持ち、新幹線に飛び乗った。





シンくんが搬送されたという病院に着いたのは夜8時頃だった。


当然ながら面会時間は終了していたけれど、今日事故に遭ったこと、急いで駆け付けたということを受付に伝えるとすんなり部屋番号を教えてもらえた。


早足で病室の前まで行き、「有馬 真」という名札を見る。どうやら1人部屋のようだ。



「シンくん…っ!!」


がらりと病室のドアを開け、その勢いで転びそうになる。


「ブフッ…」


顔を上げると、シンくんと倉田くんが私を見て吹き出していた。


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