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小さな花

第10章 Accident and Incident


「落ち着いて来いって言っただろ。ったく…」


「だって…。驚いて。もう、すっごくビックリしたんだからっ…」


いつものいたずらな笑顔を見せるシンくんを確認できて、また涙がこみ上げる。


その様子を見て倉田くんは「ちょっと売店行ってきますね」と出ていった。




「靭帯イカれたみたいで。ちょっと入院する」


シンくんが言いながら布団をめくる。
右足にギプスが装着されていた。


「うん…」


「早ければ2週間で退院だけどさ、とにかく1ヶ月は絶対足動かすなって言うんだよ。んなの、無理だよな」


彼はククッと笑いながら言い、煙草が吸いたいと嘆いている。



私は病院のそばのホテルを取り、倉田くんは会社のために萌木商店街へ戻る事になった。




翌日、「命に別状はないので」という事で、自宅近くの病院へ転院できると先生から聞かされた。


午前中の業務を終えた倉田くんがふたたび車で駆けつけてくれ、無事に萌木商店街のちかくの病院へ転院が済んだ。


松葉杖はあるものの、もしなにかあったらシンくんの大きな体を支えられる自信がない。


だから、倉田くんがいてくれて本当に良かった…。





それから私は毎日お見舞いへ行った。


2日に1回しか風呂に入れてもらえない!と文句を言っている彼の着替えを交換する。


まるで奥さんみたいだな…なんて浮かれる事もあったけれど、今はとにかくシンくんが元気に退院できるよう願っている。




事故から10日経ち、そろそろ退院を視野にと医師が言った頃。


…由梨さんがやってきた。


ベッドに横になりながら悪態をついて笑うシンくんとじゃれ合っていた私は、突然ドアが勢いよく開いたので驚いてそちらを見た。


「…え?」


つい間抜けな声が出る。


しかし由梨さんは私のことなど見えていないかのように、「シンッ…!!!」と駆け寄ってベッドにすがりついた。


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