小さな花
第10章 Accident and Incident
3人とも無言のまま数秒が過ぎ、私はとっさに病室を出ようと考えた。
「ここにいろ。」
シンくんはハッキリとそう言った。
…
「誰に聞いたんだよ。」
「社員の男の子。大地ったら私に何も連絡よこさないなんて。信じられない…」
シンくんに何か起こったら、自分に連絡が来るのが当然だという口ぶりだ。
相変わらず私を見ようともしない彼女に、私も挨拶すらしなかった。
由梨さんに申し訳ないどころか、嫌悪感でいっぱいだった。
「いつまで入院なの?」「着替えは大丈夫?」「なにか食べたい?」
なにかとシンくんの世話を焼こうとしている言動に、胸のモヤモヤが募っていく。
すると間もなく病室のドアが開き、倉田くんが入ってきた。
2日に1度はこうして顔を出してくれている。
「……―――え。」
なんでこの人がここに?という心の声が聞こえるほど、倉田くんの表情は曇った。
「え、じゃないわよ!なんで連絡よこさないの?!シンがこんな事になってるなんて…うぅ…っ」
由梨さんは強く言い、またシンくんにしがみついた。
倉田くんは持っていたコンビニのビニール袋を私に差し出し、「今日は苺のヨーグルトにしました。せいらさんのとふたつ」といつものような口調で言う。
「あ、ありがとう…」
とりあえずお礼を言って受け取った次の瞬間、由梨さんはまた大きな声を出した。
「聞いてるの大地?!」