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嵐びーえる。

第16章 番外編③ 真実のその後で

世良side


ペタリペタリと、廊下を歩く音がする。


少し先の角から、僕が待ち望んでいたその人が姿を見せた。


俯きがちだった顔が、スッと上げられる。




バチリ、目が合った。




この人は一体、何を考えているのだろう。


暗い目を見つめても、分からない。僕よりも小さな体に、いくつ秘密を背負い込んでいるのだろう。





不器用な僕にできるのは、直接ぶつけるだけ。




世「出ていく気ですか」



渡「大学病院ってのは、誰かが責任取んなきゃいけないんだよ」



それだけ言って、僕の横を歩き去っていく。



世「えじゃあ僕は?」


その背中を追いながら、語を継いだ。


世「僕はどうなるんですか?」



小走りに走る僕が、変わらず歩いている渡海先生に追いつくのは、簡単で。





世「まだ教わらなきゃいけないこと、たくさんあるのに」



渡海先生の前に出ながら、必死に訴える。


世「だって僕、渡海先生に追いつけるように、役立てるように、死に物狂いで頑張ってきたんですよ。なのにいきなり出てくなんて、あんまりじゃないですか」



歩き続けようとする渡海先生の肩を押した。


それでも止まらない渡海先生に、僕は立ち尽くす。







渡海先生は、僕を置いてどんどん進んでいく。



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