【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第1章 プロローグ
修斗のマンションからタクシーでおじいちゃんの家に戻った私は
慌ただしく準備をして
まもなく家に迎えに来てくれたツトムさんの車におじいちゃんと乗り
三人で空港へ向かった。
数時間前まで修斗と愛し合っていた身体は甘やかな気怠さに満ちて
身体の真ん中にはまだ修斗自身に貫かれている感覚が残っていた。
手続きを済ませて荷物を預け
いよいよ出発の時
ツトムさんは私に手にしていた紙袋を差し出した。
「組長からです」
入ってたのはフランス産のワインだった。
「お渡しするのを忘れたと。機内で飲んでくださいと仰っていました」
───フランスへ出発する前にお詫びとお礼を言いたいから、もし都合のいい日があったらここへ夕飯を食べに来て。私が作るから。お土産はワインがいいわ。フランス産にしてね───
そういえばそんなことを言った気がする。
「ふふ。修斗から電話が来て、うちのお店からワインを取ってきて渡せと言われたんじゃない?」
「ええ、まあ」
私はラベルにキスをして真っ赤なキスマークをつけると
ツトムさんへ返した。
「いつもありがとう、ツトムさん。でも重たいから手荷物にはしたくないわ。修斗に自分でフランスまで持って来てって伝えて」
「あっ、は、はい」
ツトムさん以上に目を丸くしているおじいちゃんが
「お、お前達、そういう仲だったのか?!」
「そういうって?」
「その、好きあっとるってことだ!」
意外なほど興奮している。
「やだ、違うわよ。別に深い意味はないわ」
笑いながらそう言うと
なんだ、だよなあ、そうだよなあ、と
おじいちゃんはみるみる残念そうな顔になった。
私と修斗は恋人同士になったけれど
この関係をまだ誰にも口外しないことを修斗に約束させられた。
修斗には背負っているものや立場があるから
私は修斗に全てをゆだねることにしていた。
「随分残念そうね。好きあってたほうが良かった?」