【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第3章 回想
現れるのは俺達子供が学校へ行っている間
母親から嫌悪感たっぷりに聞かされる話によると
父親は離婚に同意してはおらず
とにかく家に戻ってきて欲しいと
もう一度やり直したいと平身低頭で懇願するらしい。
しかしそれだけではなく
母親の両親に金を貸して欲しいと頼み込むのだという。
「あの人は私とやり直したいなんて思ってないのよ。ただ私の両親にお金を貸して欲しいから平謝りしてるだけなのよ。浅ましいったらないわ」
母親は怒りと軽蔑を隠そうともしなかった。
俺は実際に父親のその姿を目にした訳ではなかったが
あのプライドの高い父親がそんな行動を取るなんて
どれほど金に困っているのだろう
想像するだけでやるせなく気持ちが落ち込んだ。
母親は頑として離婚の姿勢を崩さなかったから状況は平行線
父親も最初の内は礼儀もわきまえ低姿勢だったらしいが
訪れる度に感情的になり
激高してわめいたりと半狂乱な状態で警察を呼ぶような事態になっていった。
母親と祖父母のストレスは限界に達し
実家に引っ越してきてからたった数か月後
父親に住所を知られないよう夜逃げ状態で俺達は再び引っ越しをした。
そこが今の家だ。
再びの転校
せっかく慣れてきた新しいクラブチームも退会
またゼロからのスタート
俺は行き場のない怒りと悲しみに打ちのめされた。
でも
それでも俺はまだ
サッカーを諦めてはいなかった。