【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第1章 プロローグ
私の言葉におじいちゃんは複雑な顔をして
「‥‥実は今までお前には言わなかったが、わしは昔から修斗には何度も言っとったんだ、由奈を嫁にどうだって。
しかしあいつはお前との結婚だけは頑として断り続けてな。長く目付役をやって来て情があるから色々世話は焼くが、女として好みじゃない、みたいなことを言いおってな」
「そうだったの?」
確かにそれは一度も聞いたことがなかった。
「わしは昔から修斗を見込んどって、実際めきめきと頭角を現してくれた。お前の目付役としてよく面倒も見てくれたし、婿に入って、二人で霧島を盛り立てていって欲しいと思っておったんだが‥‥」
「知らなかった。そうだったのね」
確かにおじいちゃんは昔から修斗を可愛がり側において引き立てていた。
でもそんなことを考えていたなんて思いもしなかった。
「修斗にあまりにも脈がないもんだから、それでわしはお前と修斗の結婚が頭に無くなって、前からお前を欲しがっていた神楽との結婚話を進めたんだ。それを聞いたら修斗の奴、驚いてなあ‥‥しかしあの時のわしは、そうするのが一番いいと思っていたから、修斗が止めるのも聞かずとっとと話を進めちまった」
私が修斗と結婚すれば一生霧島という檻から出ることはできなくなる
だから修斗は私との結婚を退け続けた。
なのに私は神楽へ嫁いで
違う檻へ移っただけだった。
その時の修斗の驚きや失望はどれほどだったろう
修斗の私に対する深い愛を知った今は
想像しただけで胸が痛い。
「お前と結婚するのは嫌だが、お前の幸せを随分気にかけとるんだなあとは、ずっと思っておった。
今回お前が出戻ったから、わしはまた修斗にどうだと言ったんだが、やっぱり断られてなあ。好みじゃねえって」
こんなにいい女を好みじゃねえとは何事だ、なあ?と
おじいちゃんは苦笑い。
「ふふ」
「由奈。お前は昔っから極道の家に生まれたことを疎んで、逃げたがってたろう。修斗はそれをわかっとったんだな」
ほろ苦い微笑みを浮かべて
おじいちゃんは私を見つめる。
「修斗は、お前を霧島から逃がしてやりてえんだろうな。極道の世界と、縁を切ってやりてえんだろうな。今回のお前のフランス行きも、修斗の絵図だしな。
あいつは何も言わんが、わしも段々あいつの考えてることがわかってきたわ」