【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第1章 プロローグ
「お前、本当は修斗とできとるんじゃねえか?」
おじいちゃんは疑わしそうな目を向ける。
その後ろで黙って控えているツトムさんも興味津々の顔。
「まさか。私は修斗の好みのタイプじゃないのよ」
「これだけははっきり言っておくぞ。もし仮にお前達が好きあったとしても、修斗の足抜けは絶対に認めねえ。組長にまでなった修斗が今更組を放り出すような男とも思えんがな。結婚してえなら、お前が霧島の姐さんになる覚悟を決めろ。いいな」
ドスのきいた低い声
その目は座っている。
私にはどんなに優しくても
やはりこの世界に生きている人間なのだと改めて思い知る。
私はわざと肩をすくめて笑った。
「はいはい、わかったわ。ところでおじいちゃん、四方八方でこぜりあってるって言ったけど、大丈夫なの?抗争とか、あるの?」
おじいちゃんがまくしたてた中に含まれていた不安の種
心に引っかかって
聞かずにはいられなかった。
「ああ、お前がわしの血圧を上げるもんだからつい余計なことまで言っちまったな。心配するな。陣取り合戦は今に始まったことじゃねえ。修斗が睨みをきかせてうまくさばいとるし、わしもいる。大丈夫だ」
「そう‥‥」
───俺はいつどうなるかわからない───
───別におどかすつもりじゃないが、だからビジネス以外ではあまり先の約束をしたくない───
不意に胸に蘇る修斗の言葉
それは決して大げさな話ではなかったのかもしれない。
「余計な心配せんで、お前はフランスでしっかり勉強してこい。ただ三か月に一度は元気な顔を見せに戻ってこいよ」
「うん」
もっと詳しく聞きたい気持ちもあったけれど
逆におじいちゃんを心配させてしまう
余計な詮索はしないほうがいいだろう。
そろそろお別れの時間
私はおじいちゃんとツトムさんとハグをした。
こぜりあい
陣取り合戦
今まで気にならなかった組の動向が気になるけれど
不安がっていても仕方がない
修斗を信じて私は進む。
道を探すと言った修斗を信じて
私は私がすべきことをする。
夢に向かって生きていく。
そしていつか私の道は
修斗が探し出した道と交わり
共に歩ける日が来るはずだから。
「じゃあね、いってきます」