【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第1章 プロローグ
しみじみとした声が描く
修斗の深く熱い愛
胸がいっぱいになって泣きそうになるけれど
ぐっと堪えて微笑んだ。
「うん」
「お前達が結婚して、二人で霧島を盛り立てて、そして孫の顔でも見せてくれたら、こんな嬉しいことはなかったんだがな‥‥」
やり切れなさそうな顔のおじいちゃんに
私は思わず
「じゃあ、もし私が修斗をくださいって言ったら、くれる?」
穏やかだったおじいちゃんの目がはっと見開かれた。
「くれるって、どういうことだ?足抜けさせてカタギにさせろってことか?!」
「うん」
「駄目だ、それは絶対にできねえ。修斗がいなけりゃ霧島は立ち行かねえ」
おじいちゃんは眉を跳ね上げ首を振った。
「修斗が霧島の上も下も引っ張って束ねとるんだ。あいつに惚れこんで組に入った若いもんも大勢いる。特に今は四方八方でこぜりあってるってのに、あいつが足抜けした日にゃあ霧島はガタガタになって他の組に潰されちまう」
「そんなに怖い顔しないで。ごめんなさい、なんとなく言ってみただけよ」
ちょっと軽率だったかも知れない。
この場に修斗がいたら恐ろしい顔で私を睨んだに違いない。
「可愛いお前と修斗の結婚は確かにわしの夢だ。しかしそれはお前が霧島の姐さんになって組を支えて守っていくことが絶対条件だ。組長の妻は腰掛けじゃ務まらねえ」
「そうよね‥‥」
私は修斗を愛している。
いつか結婚したいと思う。
でも霧島組の姐さんになりたくはない。
私も修斗も
そんな家庭は望んでいない。
───共に生きていける道を、探したい───
───万に一つだとしても、探したい───
そう言っていた修斗
道は万に一つあるのか
ないのか
あるとしたらどんな道なのか
今は想像もつかない。