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妄りな昼下がり(仮)

第2章 雪 30

「お帰んなさい」

成のさっきまでの事は何も知らない惚けた声がキッチンから聞こえてきた。
いい匂いがして、雪は腹が減っている事に気づいた。

「ね、何作ってるの」

「職場の人から肉貰ってさ、ビーフシチュー煮込んでんのよ。ちょっと待ってな雪」

困り眉で成は言う。

「ね、もう出来た?ね、こっち来て?」

雪は手招きする、こっちこっちと。成は怪訝な顔で近寄ってくる。雪は成に抱きついた。こんな時成の腕は不動で絶対に雪を抱き返したりはしない、もどかしさで胸が痛くなってくる、唇を近づけて舌を入れたが雪の舌が成の中で暴れているだけだ。

「雪ちゃんやめて」
成の不動の腕がジタバタしだす。
止めない、私は女なのに抱いてよ。心でぼやく。

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