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妄りな昼下がり(仮)

第2章 雪 30

帰り道、F駅から家最寄りのK駅まで、熱くなった体を電車内で冷ます。
大事なところが濡れている、磨りガラスに映る雪の顔は女だった、わざと描いた泣き黒子が滲んで淫猥なアンバランスさを生み出している。
切れ長の目が赤く充血していた。
達也の心も体も欲しい。もっと知りたい。
k駅を降りてトボトボと、咲く前の蕾となったソメイヨシノを見ながら、達也の事を思い帰路に着く。

成と一緒に借りた、あの家・・築30年の耐震工事のされてない賃貸が目にうつり、現実へと引き戻される。
成の軽ワゴン車が停まっている、もう仕事から帰って来たのだろうか、最近成は帰宅が早い。

「ただいま」
玄関のドアを開けて雪は成に聞こえるように言う。

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