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妄りな昼下がり(仮)

第3章 達也 時々 成

「またね」

とお互いに手を振り合いながら、雪の家最寄りのスーパーで達也と別れる。別れの余韻やら、ハグは無かった、雨は小雨になっていてビニール傘をささなくても良いくらいになっていた。
雪は達也がスーパーの駐車場から出るのを見送ったら、スーパーで晩御飯のお惣菜を買った。体の倦怠感で今日は手作りにする気が起きなかった。
左手にお惣菜の入ったビニール袋、右手にビニール傘を持ってトボトボと家までの道のりを歩く。
どうでも良くなっていた気持ちがまた蘇えって来て、恥部が熱くなる。達也の唯一無二の肌が、嗄れた声が多分またすぐに欲しくなるだろう。初めて会った時に達也の心も欲しいと思った。あれは、性欲に負けた雪の誤算だったと思う。セックスだけで良い。そこにプラスお互いが少しだけ思いやる気持ちがあれば。雪と成の家が見えて来た、家の前にある公園に植えられたビオラやパンジー、ソメイヨシノがしとどに濡れていた。ソメイヨシノの開花もあと2、3日というところだろう。この雨が上がると、明後日くらいから暖かくなるはずだ。

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