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雪はグラスに注がれた赤ワインを見ながら項垂れる。雪の記憶が回想されていく。

「両親かぁ、物心ついた時にはお父さんいなかったんですよね。でお母さんもいなかった。なんでか分からないんですけど、私は元々、祖父祖母と暮らしていたんです。けど小学校三年生の時に、母は私を迎えに来ました、よく知らない男を連れて、母の男は複数人いました、日によって連れて来る人が違うんです。たまに凄く私を折檻しました。私は母の顔色を伺って生きていたの。高校を卒業するまでは。」

雪の記憶が回転木馬のように回っている、そして雅人の顔も壁も全てがグルグルと、全てが捻れて、ひしゃげて歪んでいる。あの時の母が男の上で跨っている。グルグルと。男達は母にお金を渡していた。・・気がする。そうか、そうか、母は我が家を売春宿にしていたんだな。雪は全ての事を理解した。足りない頭で。
雅人は雪を見て、吊り上がっだ眉毛を分かりやすく下げて雪を哀れんでいる。

「ごめん、嫌な事思い出させて。君があまりにも「まとも」にお喋り出来る子だったから、良いご両親に育てられたかと思ったんだ。今日日の子達は、ナイフとフォークの使い方も知らないんだよ。君は上手に扱ってるからさ・・
雪、寂しかったら俺を頼って良いんだよ。なんでも言って受け止めるから。」

雅人が雪を抱きしめた。