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妄りな昼下がり(仮)

第5章 名もなき男 のち 秋斗 時々 達也

着いた先は瀬戸内海が見渡せる展望台だった、運動不足が祟った雪は、展望台まで登る体力が無く肩で息をする。

「達也さぁん、疲れました…」

「雪ちゃーん、鈍ってるねぇ。展望台からほら島見えるやろ?
あれが、瀬戸大橋、あれが栗島よ!」

えっ栗島なんて、あったっけ?雪はふと疑問に思って島の名前が書いてある。プレートを見る。

栗じゃ無くて、粟だ。アワ
ひえや、あわの、粟なんだよ。達也。やはり達也とは産まれてきた世界が違う。雪はそう思う。しかし、指摘すれば達也のプライドを傷つけると思って何も言えない。

「達也さん、疲れたからベンチで座って良いですか?」

「雪ちゃんは、体力が無いな〜、良いよ。」

達也は渋々ベンチに座る。雪も座る。

「俺あれから、雪ちゃんに伝えたいことあって・・。」

待って、と雪が達也の口を左手で塞ぐ。

「達也さん、ここも絶景で凄く良いところです。でも2人きりになりたい。私、ずっとそんな感じで言ってるのに気付きませんでした?あと、キスがしたいんです。」

達也の生唾を飲み込む音が聞こえた。察してくれたのだろうか?

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