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妄りな昼下がり(仮)

第2章 雪 30

春めいた風と陽気が雪を眠気に誘う、微睡みたいのは達也も同じなのだろうか?左手からカサカサと音を立てるマドレーヌの入れ物がやけに鬱陶しい。
前方から達也と思われる男がやってくる、F駅の喧騒に似合わぬ冷たい顔をした美男子だった。
写真の通りだ、雪は高鳴る胸の音を感じた。タイムリミットは17時まで、13時からは4時間。
充分に情事する時間はある。達也の第一声
「雪ちゃん?」
顔に似合うハスキーボイスだ、脈打つ、潤う。達也の声は煙草を吸う男独特の嗄れが有って、とてもセクシーだ。
「カフェでお茶しましょうか?」
達也はそう言ってニコリと微笑んだ。雪は自分でも分かるくらい鼓動を感じた。

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