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妄りな昼下がり(仮)

第7章 混ぜたら危険。雪vs母

珈琲を飲み干して、少し経ったところで。

「話し合いしても埒があかないっすね。もう俺達帰ります。」

そう言って成が雪の腕を引っ張った。

「そう。バイバーイ。もう別れるとか言うなよ〜。」

雪の母は、そう言って二本目のメビウスに火を点ける。
マスターが成と雪がドアを開けた瞬間にコッソリ告げる。

「山ちゃん、あんな態度だけどね、本当は娘さん来るの喜んでたんだよ。いつも娘さんの写真持ち歩いてるんだよ。なんであんなに素直じゃないのかな。山ちゃん毎週水曜日に来店してくれるんだけど、それ以外の日は来ないから、また聞きたい事があったらおいで。」

「もう来ません。」

つっけんどんに成が返事して、マスターが悲しそうな顔をする。
雪は何故かマスターの事は、これからも忘れないだろうなと思った。
二人で成の軽バンに乗り込んで、M喫茶を出た。どんどんM喫茶が小さくなってきたところで、成がポツリと呟いた。

「お前と、母さん会わせたんは、俺の誤算やった。ごめんな。本当にごめん。けど別居する意思は変わってない。だから、お前はあの家に今のまま住んでな。俺が出て行くけん。」

嫌だと言う気力も、何₍もかもが尽き果てた雪は黙って頷いた。
もう、本当に本当に何もかもが終わったのだなと思った。

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