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妄りな昼下がり(仮)

第8章 子宮の中へ。

「お見舞いに来てくれる人は?お父さんや、お母さんは?」

雪が聞くと

「・・雪に言ってなかったよな、俺のおとんは俺と同じ病気で亡くなってるん、おかんは俺産んだ後に男と駆け落ちして蒸発したんや。」

「じゃあ、癌の告知の時は?誰かついてくれていた?手術台に向かう時は。」

「全部、1人や・・」

1人で全ての事を受け止めた、成の手を握って以前よりは痩せてしまったなと思いながら、雪はさめざめ泣いた。

「なんで、雪が泣くん?」

「成の事、愛してるから。」

「あほ言うな、俺は病気持ちぞ。やめとけ。けどな、ほんまは雪に言うつもりなかったけど、電話くれたやろ、俺も雪に会いたかったんよ。退院したら抗がん剤治療が始まる。多分もう本当に会えんでな。」

そう言って話してる途中に見舞客が来る、恰幅の良い中年男だった。

「おっ、新谷〜、彼女さんかぁ?早よ元気になって、彼女さん安心させてやれよー。」

見舞い客は、成の同僚のようだった。
雪の顔がみるみるうちに泣き顔から赤ら顔に変わる。

「可愛いらしい、彼女さん悲しませたらあかんよ、新谷〜。」

そう茶化されて、雪は両手で顔を隠した。
成がプッと笑う。
それから、雪は成の病室に足繁く通った。来るなと言われても台風が近づいても毎日通った。抗がん剤治療の事をサイトで調べたら、仕事は暫く出来なくなるくらいシンドイようなので、それと同時に売春も初めるようになった。抗がん剤治療以外にも、民間治療を成に受けさせて、早く癌細胞を死滅させたかった。その為には金がかかった。売春を初めだしてから、以前のように虚しい気持ちは無くなっていた。つきものが落ちたかのように。

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