このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜
第4章 予期せぬ婚約
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「今日、デビュタントへ着ていくドレスが届いたようだね」
「ええ、先程。予想以上に素敵な仕上がりだったわ」
「それは良かった。当日、そのドレスを身に纏《まと》ったリディを見るのが楽しみだよ」
「そんなに期待なさらないで。私なんかが……恥ずかしいわ」
「そんなことはないさ。リディは誰よりも美しいよ、もっと自信を持って」
紅茶を片手にそう告げた兄は、私を見つめる瞳に優しい光を宿すと、その口元に薄く弧を描いた。
身内贔屓《びいき》な言葉とは分かってはいるけれど、昔からこうして兄は私を褒めてくれる。その言葉に沢山救われてきたことも事実で、幼き頃より自信の持てなかった私は、そのお陰で少しずつではあるけれど自信を持てるようにもなってきた。
「ありがとう、お兄様……」
照れながらも小さく微笑めば、そんな私を見て満足したかのように微笑み返した兄。その手に握られたカップを静かにソーサーへと戻すと、再び私に視線を移した兄はその口を開いた。
「当日の夜は、ドゥーラで一泊する事にしたよ。翌日の午後に、少し帝都で観光でもしてから帰ろう」
「え……、ドゥーラで? そんなに高いところでなくても……」
帝都まで五十キロも離れているということもあり、泊まりになることは予め分かってはいたけれど、その宿の名前を聞いた私は驚きに身を萎縮させた。
兄の言うドゥーラとは、この帝都でも一番を誇る高級宿で、諸国から訪れる皇族や王族などが利用することで知られている。デビュタントで訪れる貴族が利用するなど、聞いた事がない。それ程に敷居が高い宿なのだ。
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「今日、デビュタントへ着ていくドレスが届いたようだね」
「ええ、先程。予想以上に素敵な仕上がりだったわ」
「それは良かった。当日、そのドレスを身に纏《まと》ったリディを見るのが楽しみだよ」
「そんなに期待なさらないで。私なんかが……恥ずかしいわ」
「そんなことはないさ。リディは誰よりも美しいよ、もっと自信を持って」
紅茶を片手にそう告げた兄は、私を見つめる瞳に優しい光を宿すと、その口元に薄く弧を描いた。
身内贔屓《びいき》な言葉とは分かってはいるけれど、昔からこうして兄は私を褒めてくれる。その言葉に沢山救われてきたことも事実で、幼き頃より自信の持てなかった私は、そのお陰で少しずつではあるけれど自信を持てるようにもなってきた。
「ありがとう、お兄様……」
照れながらも小さく微笑めば、そんな私を見て満足したかのように微笑み返した兄。その手に握られたカップを静かにソーサーへと戻すと、再び私に視線を移した兄はその口を開いた。
「当日の夜は、ドゥーラで一泊する事にしたよ。翌日の午後に、少し帝都で観光でもしてから帰ろう」
「え……、ドゥーラで? そんなに高いところでなくても……」
帝都まで五十キロも離れているということもあり、泊まりになることは予め分かってはいたけれど、その宿の名前を聞いた私は驚きに身を萎縮させた。
兄の言うドゥーラとは、この帝都でも一番を誇る高級宿で、諸国から訪れる皇族や王族などが利用することで知られている。デビュタントで訪れる貴族が利用するなど、聞いた事がない。それ程に敷居が高い宿なのだ。