このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜
第4章 予期せぬ婚約
「今日は、リディに結婚の申し入れをしたく参りました」
───!!
「なんと……っ! それは本当ですか!?」
「ええ、勿論です。ですが、噂によると既に沢山の申し入れがきているとか……。もしや、既にどなたかにお決めになられているのでは?」
「いえいえ! 滅相もございません! ランカスター卿に見初められるとは、リディアナもさぞや嬉しいことでしょう! ……そうであろう? リディアナ」
「……え、ええ……お父様……っ」
信じられない思いに瞳を見開くと、私は目の前にいるウィリアムの姿を呆然と見つめた。
(これは……夢ではないの? 本当に、ウィルが私を……っ?)
胸の奥から急激に迫り上がってきた強い感情に押し流されると、ついに耐えきれなくなった私の瞳からポタリと涙が零れた。溢れ出る涙を抑えようと懸命に拭うも、収まるどころか次から次へと溢れ出てくる。
そんな私に向けて綺麗な刺繍の施されたハンカチを差し出すと、まるで慈しむかのような瞳で私を見つめるウィリアム。
「リディの返事は、イエスと受け取っても?」
「っ……! ええ、勿論ですわ……っ」
涙を流しながらも小さくそう答えると、その様子を静かに隣りで見守っていた父は、慈愛に満ちた瞳で私を見つめるとその瞳を潤ませたのだった。