このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜
第2章 実ってゆく恋心
※※※
「あぁ……ほら、見てごらんリディ。どうやら無事に花が開いたみたいだよ」
ウィリアムの指し示す方角に目を向けてみると、そこには色鮮やかな薔薇が見事に花を咲かせていた。初夏を告げる品種である花だというのに、秋口である今こうして花を咲かせたのは、この温室の管理がそれだけしっかりと行き届いている証拠なのだろう。
剣の腕前もさることながら、こうして花を愛でることを趣味とするウィリアムは、薔薇の品種改良でさえも自身で行っているのだとか。そんな話しを、二年程前に話していた事を思い出す。
その恐ろしいまでに人々を魅了して止まない、この世の者とは思えぬ美しさを持って生まれたウィリアム。彼はまるで神に愛されて生まれた申し子かの如く、あらゆる才にも恵まれていた。
「わぁ……っ! とても綺麗だわ! これがあの、品種改良したという薔薇なの?」
「そうだよ。気に入ってくれたかな?」
「ええ、とっても!」
「それは良かった。これはリディの為だけに作った、世界で一つだけの薔薇だからね」
興奮して瞳を輝かせる私を見てクスリと声を漏らしたウィリアムは、手近にあった薔薇を一茎手折るとそれを私に向けて差し出した。
「美しいリディに、よく似合うよ」
その言葉に、私の動きはピタリと止まった。
本当に、こんなにも美しい薔薇が私なんかに似合うのだろうか——?
私のことを、妹のように可愛がってくれているウィリアム。その言葉を決して疑っているわけではないけれど、それはあくまでも妹としての賛美の言葉であり、そうだと分かっているからこそ自信が持てない。
「……大丈夫、棘はないから安心してごらん」
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、薔薇を前に躊躇いを見せた私に向けて優しく微笑むと、そっと私の手に薔薇を握らせてくれたウィリアム。
「あぁ……ほら、よく似合っている」
そう告げながら、私の頬を優しく撫でたウィリアム。その瞳はとても妖艶で、ゾクリとしたものが背筋を走ると、私はその瞳から視線を逸らすこともできずにその場で固まった。
私の手元にある、品種改良したという色鮮やかな光沢を放つ真っ赤な薔薇。それはまるで、アダムとイブが食べたとされる禁断の果実かのように、ウィリアムの瞳を通して私を誘惑する。
「あぁ……ほら、見てごらんリディ。どうやら無事に花が開いたみたいだよ」
ウィリアムの指し示す方角に目を向けてみると、そこには色鮮やかな薔薇が見事に花を咲かせていた。初夏を告げる品種である花だというのに、秋口である今こうして花を咲かせたのは、この温室の管理がそれだけしっかりと行き届いている証拠なのだろう。
剣の腕前もさることながら、こうして花を愛でることを趣味とするウィリアムは、薔薇の品種改良でさえも自身で行っているのだとか。そんな話しを、二年程前に話していた事を思い出す。
その恐ろしいまでに人々を魅了して止まない、この世の者とは思えぬ美しさを持って生まれたウィリアム。彼はまるで神に愛されて生まれた申し子かの如く、あらゆる才にも恵まれていた。
「わぁ……っ! とても綺麗だわ! これがあの、品種改良したという薔薇なの?」
「そうだよ。気に入ってくれたかな?」
「ええ、とっても!」
「それは良かった。これはリディの為だけに作った、世界で一つだけの薔薇だからね」
興奮して瞳を輝かせる私を見てクスリと声を漏らしたウィリアムは、手近にあった薔薇を一茎手折るとそれを私に向けて差し出した。
「美しいリディに、よく似合うよ」
その言葉に、私の動きはピタリと止まった。
本当に、こんなにも美しい薔薇が私なんかに似合うのだろうか——?
私のことを、妹のように可愛がってくれているウィリアム。その言葉を決して疑っているわけではないけれど、それはあくまでも妹としての賛美の言葉であり、そうだと分かっているからこそ自信が持てない。
「……大丈夫、棘はないから安心してごらん」
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、薔薇を前に躊躇いを見せた私に向けて優しく微笑むと、そっと私の手に薔薇を握らせてくれたウィリアム。
「あぁ……ほら、よく似合っている」
そう告げながら、私の頬を優しく撫でたウィリアム。その瞳はとても妖艶で、ゾクリとしたものが背筋を走ると、私はその瞳から視線を逸らすこともできずにその場で固まった。
私の手元にある、品種改良したという色鮮やかな光沢を放つ真っ赤な薔薇。それはまるで、アダムとイブが食べたとされる禁断の果実かのように、ウィリアムの瞳を通して私を誘惑する。