🌹密会🌹
第11章 🌹March🌹(終章)-2
...馬鹿な事を考えるのはやめよう。
さて、身体を洗わなきゃって...え?!
ッ!!つ、冷た....!
急激にシャワーの温度が下がり、美月はシャワーを止めた。
まるで自分の家のシャワーのようだ。時たまこういった事はあるが、黎一さんの自宅でもあるのだなと納得しかけて、チラリと給湯器の浴室リモコンに目を移した。
液晶パネルが暗くなっていた。どうやら電源が入っていないらしい。
ん..?さっき付いてなかったっけ...?
美月は不思議に思いながら、リモコンの電源をオンにするべく、ボタンを押す。
だが何度押してもリモコンは全く反応しない。
え....故障....?
こんな時に嘘でしょ?
焦った美月は慌てて浴室の扉を開ける。
脱衣所に脱ぎ捨てた服は既に彼が回収してしまったようで、ますます美月は混乱に陥る事となった。
「黎一さん!!!」
美月は浴室から2階の寝室に居る筈の彼に向かって、思いっきり叫んだ。
大分距離があるが、備え付けのバスタオル1枚しか無い状況では、助けを呼ぶ以外、方法が無かったのだ。
そして暫く美月は、その場で待ってみたが、2階から1階へ降りてくる足音は聞こえない。
やっぱ...ダメか...。
諦めて美月は浴室へ引き返そうとした。
その瞬間、彼女の耳は僅かだが、玄関扉の開閉音を拾い上げたのだった。
アレ...また...?気のせいじゃなかった?
もしかして黎一さん...?
何で...?
2階に居るんじゃないの...?
彼女は疑問に思いながら、そのまま耳を澄ます。床を踏みしめる彼の足音が美月の耳に聞こえたのだ。
そして、こちらの方角に向かっているのか、彼の荒々しい足音は徐々に大きくなっていく。
「黎一さん...あの...お風呂場、水しか出なくて...故障しているのかも...」
自分の望んだ形で来てくれたわけではないが、何とか彼に事情を説明する事は出来た。
後はこれで彼が対応してくれるだろう。
だが、それは彼女の希望的観測にすぎなかったと思い知らされるのだ。