🌹密会🌹
第11章 🌹March🌹(終章)-2
「だから何だ?水で洗えばいいだろう。」
彼は蔑むような薄ら笑いを浮かべると、バスタオル1枚を巻き付けているだけの彼女に平然と言い放ったのだ。
「冗談ですよね...?まだ暖房が必須な3月ですよ...?」
彼の非情な発言が信じ切れずに、美月は再度彼に問いかける。が、彼は全く取り合う気はないようで、冷笑を浮かべたまま美月に顎で「さっさと行け」と指示を出すだけだった。
...なんて酷い人なの...。
そんな彼の横柄な態度に美月の心は精神的なショックを受ける。だが、袋の鼠でしかない今の状況では、浴室へ足を運ぶしかないのだ。
美月は、纏っていたバスタオルを床に落とすと、重い足取りで再びバスルームへと戻った。
アクリルで出来た七宝柄のバスチェアに腰をかけると、椅子とお揃いの洗面器に水を張っていく。
水で一杯になった洗面器の中に、タオルハンガーに掛けられていたボディタオルを投入。
水分を含んだタオルを手に取り、ボディソープを付け丁寧に泡立てようとして、ピタリと美月の手が止まった。
待って。何も考えずに泡立てて身体を洗ったりしたら、洗い落とすのが大変になる。
ホテルで身体は洗ってきたし、サッと身体を撫でる程度でいいかも。
ただでさえ苦行だし、黎一さんも待たせちゃう。
そうしよう。
美月は休めていた手を動かし始めると、あまり泡立っていないボディタオルで全身を軽く洗い、シャワーに手をかけると、水量を弱目に調節する。
時間はかかるけど、
まずは肩から洗い流さそう。
美月がそう思っていると、突然バスルームの扉が大きく開かれ、寝室で待っている筈の日比谷教頭がスーツを着込んだまま、入ってきたのだった。