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🌹密会🌹

第12章 🌹March🌹(終章)-3



「洗濯機と乾燥機にかけたから、恐らく乾いている筈だ。」
日比谷教頭は、そう言いながら美月が着ていた下着や洋服を手渡す。
みるみる顔を赤くしながらも、美月は「ありがとう。」と小声で言い、衣服を着ると、彼と共に産婦人科へと向かった。

今日は運の悪い事に祝日の日曜だ。何処も休診が多い中、ギリギリ午前中まで緊急避妊にかかる対面診察が可能な婦人科クリニックへ日比谷教頭は車を飛ばしてくれた。
長時間待合室で待たされた後に、診察を受けて無事、アフターピルを処方された。


文句1つ溢す事もなく側にいてくれた上に、会計も彼が全て払った。
帰りにまた薬局にも寄ってくれた。

吐き気や頭痛などの副作用の症状が酷い時は市販薬を使用してくれと院長から言われたからだ。

「そこまでしなくても」という美月の言葉を遮り、「念の為に備えておいた方いい。」と市販薬を買ってくれた。ついでに近くの食料品店にも寄って、「何か食べれる物は?」と聞いてくれた。ハーゲンダッ◯のアイスが食べたいと強請れば、全種類を買い物カゴの中に入れそうになっていたので、慌てて彼女は止めに入ったのだ。


献身的な彼の姿に、本当に大切にされているような気がした。


帰り道、助手席に座りながら美月は自分の瞼が重くなっていくのを感じた。


ダメ....もうすぐ家に着くのに....


車のフロントガラスから、自宅マンションへと続く見慣れた通り道が映った。
だが襲いかかる睡魔に勝てず、美月はカクリカクリと首を上下に動かしながら、沈み込むように寝入ったのだった。








「ん...!あれ....!」



美月は慌ててベッドから起き上がった。
頭から布団と毛布をかけられ、再び黎一さんのベッドを占領してしまっている状況だった。


時刻は夕方の4時過ぎ。日比谷教頭の落ち着いた車内で眠りに落ち、そのまま此処へ運ばれてきた事にも気付かず、すっかり夕刻になってしまったらしい。


枕元の隣には婦人科で処方された薬、1口サイズの食べ易そうなお菓子、熱冷まシート、500MLのミネラルウォーターが3本横向きに置かれていた。
美月は2つに折り畳まされたメモ用紙を広げた。

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