🌹密会🌹
第12章 🌹March🌹(終章)-3
「美月、電話で呼び出せと言っただろう。」
リビングのソファにもたれかかり、読書に没頭しているように見えた日比谷教頭は立ち上がると、階段を下りキッチンの作業スペースにひょっこり現れた美月へと早足で近付いた。
「ごめんなさい。なんか申し訳なくて...。それに熱も少し下がりましたし....。」
キッチンの冷凍庫を開けようとしていた手を止めてそう言うと、日比谷教頭はやれやれと言った感じで、口を開いた。
「一時的に下がり、また上がってくる事もある。いいから安静にしていなさい。次からは無駄な遠慮はせずスマホを使うように。」
少々、過保護にも聞こえる日比谷教頭の発言に美月は「はい」と小さく返答した後、キッチンのステンレスワークトップに置かれた食品の山を見つけて「え!」と驚きの声を上げてしまった。
「ああ...アイスだけではどうかと思って、消化に良さそうな食品を買ってきたんだ。冷蔵庫にも色々詰めておいた。好きな物が有れば一緒に取っていっていい。」
当然のようにセット買いされているレトルトのお粥と雑炊、何故か10種類もあるフルーツゼリー、冷蔵庫を開けるとプリンやヨーグルト、野菜ジュース等が詰め込まれており、美月の目は点になってしまった。
「あの...とっても嬉しいんですけど、こんなに買う必要は無かったかと...。」
「そう...だろうな...私もここまで買う予定ではなかったんだが、気もそぞろな状態で買い物に行ったのかマズかったんだろう。気づいた時には会計を済ませてしまっていて、大量に返品するのもどうかと思ってな...。まあ...なんだ...余った物は私の方で処理する。君が気にする必要は無い。」
いつもの冷静沈着な彼からは考えられない程のそそっかしい行動に、美月はまたしてもビックリ仰天だったが、暫くするとクスッと吹き出してしまったのだった。