🌹密会🌹
第12章 🌹March🌹(終章)-3
「黎一さんでも、そういう事ってあるんですね。」
「あまり笑わないでくれ。自分でも驚いているんだ。」
「はいはい。じゃあたまご粥と、ブルーベリーヨーグルトも一緒にもらっていこうかなと思います。」
「お粥は温めた方が美味いだろう。後で私が容器に移して温めたものを持っていく。美月は先に部屋に戻って食べていなさい。」
「冷めたくても充分美味しいです。そこまで気にしなくても大丈夫です。」
「これぐらいやらせてくれ。食べ終わった食器は部屋の外に出してくれればいい。後で回収する。」
「すみません...何から何まで...。では、先に部屋で食べてますね。」
美月はハーゲンダッ◯のアイスとブルーベリーヨーグルトを手に持つと、階段をスタスタと上がっていった。
暖房の効いた寝室に戻った美月は、ナイトテーブルにアイスとヨーグルトを置くと、ベッドに腰かける。
先に持ってきちゃったけど、
お粥を食べてからにしようかな....。
まだ回復には至ってないけど、ひとまず熱が下がってよかった....。
.....。
結局、黎一さんがしたかった“今後に関わる大事な話”は直接聞けずに終わるのかな...。
このまま自然消滅...。いや、明日の帰り際に別れの一言ぐらいはあるかもしれない...。
......。もうこの家に来る事もないのかもしれない。そう考えると寂しいな。
美月は徐にベッドから立ち上がる。少し手持ち無沙汰な時間が出来た今、何となくその足は黒いパソコンデスクへと向かった。
美月はその時、妙にその引き出しの中身が気になってしまった。
もうここに足を踏み入れる事はないと悟った彼女の、彼女らしからぬ些細な出来心だった。
大した物は入っていないだろう。
そう思いながら、美月はガラッと引き出しを開けた。