🌹密会🌹
第12章 🌹March🌹(終章)-3
退職願と書かれた白封筒
重厚そうな黒のリングボックス
それら2つが引き出しに入っていたという事実に、美月は息を呑む程驚いたのだった。
何で.....。
何でこんなものを....。
美月は退職願と書かれた封筒を震える手で掴んだ。幸い封がされていない。三つ折りにされた中身を引っ張り出すと、サッと目を走らせていく。
校長宛に一身上の都合で4月末に退職をしたいという内容が万年筆で力強く書かれていた。加えて退職願の提出日付けが明日の3月14日となっていた。
つまり、この退職願は昨晩から今日にかけて彼が書いた可能性が極めて高いと言えるだろう。
美月は、隣のリングボックスにも手を伸ばした。内側に白地でEXELCO DIAMONDとブランド名が刻まれたリングケースの中央には、眩い光を放つダイヤモンドの指輪が入っていた。
指輪のアームには、小粒石のダイヤモンドがちらばめられており、それが4本爪で留められたセンターダイヤモンドをより一層引き立てていて、実に見事な造りだった。
いくら鈍感な美月でも、流石にエンゲージリングだろうと気づく。
彼は、未来の婚約者にこの指輪を渡す予定だった。
でも、その隣に退職願がある。
昨日私に暴行を働いたから、その責任を取る為?
でも、そうすれば彼女との婚約に支障が出る。
最悪、この指輪だって渡せるかどうか分からなくなるかもしれない。
そんなデメリットを背負ってまで、彼は何故退職をする必要がある?
どうして....。
私は、都合が良いだけの、いつでも替えが利く女じゃないの?
これじゃまるで....。