🌹密会🌹
第12章 🌹March🌹(終章)-3
「はい...今、思い出しました。確かに電話をかけました。黎一さんも私に丁度、電話をかけようとしていたんですか?」
耳まで赤く染まった顔を手で仰ぎながら、やや早口で美月は彼に尋ねる。
「そうだ。通話ボタンを押そうとしたタイミングで、お前から電話がかかってきた。理由はどうあれ初めてお前からセックスの誘いを受けた。ホテルで会いたいと言われた瞬間、話を先延ばしにするしかないと思ったよ。」
「黎一さん、嬉しかったんですね...。あの時、唐突に言葉攻めしたくなったのかなって思ってました。」
「確かに加虐心も煽られたが、それだけで車の送迎を申し出るか?金も多く入れていた筈だ。セックスの後、私の態度はまるで違っただろう。」
「そう...ですね、確かに!え...じゃあ私、あの時、黎一さんの事を知らず知らずのうちに....あの....煽ってたって事ですか......?」
「....まあ........そういう事になる。」
急に歯切れ悪く答えた彼の頬は、やや赤みがさしていた。
「なんか...ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんです...。」
「いやお前が悪いんじゃない。俺が勝手に魅了されただけだ。」
ボソッと独り言のように呟いた彼は、羞恥で赤らんだ顔を隠す為に美月からやや顔を背けた。
「その後も...えっと...何度か私に話をしようと思った事はあったんですか?」
その羞恥が伝染してきたかのように、美月も顔が熱くなるのを感じた。
「毎回、思った。」
一言、彼は素っ気ない口調で答える。
それ以上...踏み込んで聞いてもいいのかな...。
美月が続けて質問をしようか迷っていると、その心を見透かしたように、続けて彼は答えたのだ。
「無論、お前を抱いた後だ。俺の性格を考えれば、理由は分かるだろう。」
軽い咳払いをした後に、彼は顔を逸らしたまま言葉を付け足した。