🌹密会🌹
第12章 🌹March🌹(終章)-3
「悪いな、美月。頭が冷えて落ち着いてきた為か急に羞恥が込み上げてきた。出来れば質問はあと1つぐらいにして頂きたい。」
「え..あ...分かりました。じゃあ...えっと...指輪はいつ購入されたのか聞いてもいいですか...?」
「11月だ。本当はクリスマスにプレゼントしたかった。今考えれば、渡しておけば良かったと後悔している。」
「そうだったんですね...。確かにその時に欲しかったかも...。」
「.....。渡すのを躊躇した理由も言うべきか?」
「い、いえ!大丈夫です!流石に分かりますから!!それに今、私の手元にあるわけですし、何も問題は無いです!!」
そう声を張り上げて力説する美月の姿に、日比谷教頭がクスッと笑みをこぼす。
続けて美月も馬鹿馬鹿しくなってきたのか、口元に手を当てながら、フフッと微笑をもらした。
美月は手の届く範囲に置いてあったリングケースを手に取ると、指輪を薬指にはめ込んだ。
「綺麗...。」
サイズはピッタリだった。
まるで童話シンデレラが履いていたガラスの靴のようだった。
「美月」
慈しむように婚約指輪を撫でていた美月に、ふと彼は声をかけた。
「お前は別格な女だ。だが1つ欠点がある。それは自己肯定感の低さだ。自分の価値を自分で認められない部分だ。俺はもっとお前に堂々としてほしいと思っている。だから、これからは俺と共に胸を張って生きてほしい。良い女なんだから。」
こともなげにそう言い切った彼の言葉が美月の心に染み渡っていく。
彼が好きだ。
こんな、いとも簡単に
私の欲しかった言葉をくれる彼が
好きだ。
美月は感極まった声を放って、泣いた。
感涙に咽び泣く彼女を、彼は柔らかい眼差しで見つめた後、指先で彼女の涙を優しくなぞったのだった。