🌹密会🌹
第3章 🌹June🌹
退勤後だというのに疲労を全く感じさせないスマートかつ活動的なビジネスマンを彷彿させる彼に向かって、ペコリと軽く会釈をすれば、「今、帰りですか?」と問いかけられた。
「そうなんです...。」
「そうですか...。ところで貴方の傘は?」
「えっと...持ってくるのを忘れてしまって...でも、後は帰るだけなので、もう濡れて帰ろうかと。」
心底呆れ果てている教頭の顔を直視出来ずに、地面や手元を見ながら返答する。
何も返答が返ってこない状況に恥ずかしくなった私は、「では、お先に。」と言って、すぐさま立ち去ろうとしたが、彼に片腕をガッシリ掴まれてしまった。