🌹密会🌹
第3章 🌹June🌹
「熱心に生徒指導されましたね、放課後。」
若干眠りそうになっていた所で、日比谷教頭の凛とした声に意識が浮上する。
「...今後の進路の事で...ちょっと相談を受けまして...。」
姿勢を正し、慌てて目を擦りながらそう言うと、日比谷教頭は薄笑いを浮かべた。
「生徒思いなのは結構だが、人気の無い空き教室というのは感心しないな。」
鋭い流し目で一瞥されて、私はビクリと身体が震える。
「ご、ご両親の方と志望校の事で揉めているみたいで...相談というか、愚痴に近いものだったんですが...本人があまり人に聞かれたくないと言っていたので...。」
「なるほど...。では私が通りかかった際、男子生徒に手を握られていたようにも見えましたが、見間違いでしたか?」
「いえ...あの...また私に相談したいと言っていたので、いつでも遠慮なくと言ったら手を握られて...多分その場面を偶々見ただけかと...。なので生徒に深い意味は無いかと思います。」
先程から、ややトゲの含んだ彼の口調に威圧されながらも、事情を説明すると、彼の愛想笑いとも捉えられる薄笑いが消え、枯木寒巌な顔つきへと変わる。