🌹密会🌹
第6章 🌹September🌹
...なんか、頭クラクラする。
車、何処だろう。待たせちゃうから、早くしないと。
熱が既に上がってきたのか、視界が歪む中、何とか黒いベンツを見つけると、早足で駆け寄り、空いている助手席に乗り込んだ。
「ハァ...ハァ...。ごめんなさい、遅れちゃって。」
乗った直後、ぺこりと頭を下げると、いつもより来るのが遅れてしまった事を口頭で謝ると、シートベルトを着用する。
「少し...顔色が悪い気がするが。」
思案顔で彼にそう指摘され、私は「全然!大丈夫です。」と言いながら、無理矢理笑みを作った。
「....嘘をつくな。熱があるだろう。」
前髪を上げられ、彼の手の平が私のおでこに当たる。早々に体調不良がバレてしまい、肩を落とした私は、「ごめんなさい。」と小さく謝った。
「熱は測ってきたか?」
「はい。上がってなければ、38度5分です。」
「高熱だな。近くの内科に連れて行く。」
「え!?い、いや、大丈夫です。帰って寝れば多分治るので。」
「念の為行った方が良い。土曜の午前なら何処か空いてるだろう。」
「でも、黎一さんの手を煩わすのは申し訳ないです。」
「別に迷惑ではない。お前は自分の体調の事だけ考えろ。」
そうキッパリ言い放つと、エンジンをかけて本来の目的地とは別の、近くの内科へと車を走らせ、狭い駐車場に停車させる。
「一人で大丈夫ですから。」と彼に伝えて、助手席から降り立ち、バッグを抱えて病院内に入る。
診察後、ただの風邪だと分かってホッとした私は、薬を受け取った後、車内で待たせてしまっている彼の元へ急足で向かった。