🌹密会🌹
第9章 🌹February🌹
それから10日間あまりが過ぎた、日曜日の昼下がり。
ピンクとグレーのインテリアで統一された自室で一人寛いでいると、聞き慣れた着信音が室内に響き渡る。
スマホに表示された名前に、弾かれたように電話に出れば、心地良く響く日比谷教頭の声が耳に伝わった。
「私だが...体調は良くなったか?」
「あ、はい...ある程度回復致しました。日比谷教頭にご心配をおかけして申し訳ないです。」
実は先月、彼からの誘いを断ってしまっている。理由は、彼の2番目の女として抱かれる事への限界と、本音を口にしてしまう事への恐怖だった。無い物強請りをする面倒な女になってしまった事実を隠し通せる自信が一切無かったのだ。
体調不良は、あくまでも理性で片付けられない感情を整理する為に吐いた嘘だったが、開口一番に心配されてしまうと、私の良心がチクリと傷む。
また、お誘いだろうか...?
今度は流石に断れないだろうから、行くしかないけれど最悪ボロが出てしまいそう。
必死に取り繕ってもいざ彼を前にすると全て露呈してしまうのではないか、そんな懸念を抱いているとは露程も知らない彼の穏やかな声に思考が引き戻される。