🌹密会🌹
第10章 🌹March(終章)-1🌹
「隣、いいですか?」
涙を拭っている最中の美月に、ハスキーな男の声がかけられる。
振り返れば、チョークストライプスーツに身を包んだ、茶髪の男が柔和な笑みを浮かべていた。
「どうぞ。」と小声で返すと、男は「ありがとう。」と一言礼を述べて隣に腰をかける。
「良ければ話、聞こうか?」
ロレックスの腕時計、純金と思われる太めのダイヤカットリング、スーツも高そうだなとぼんやり眺めていた所、唐突な提案をされ、美月はビクリと肩を震わせた。
「....大丈夫です...つまらない話ですし。」
「話せばスッキリするんじゃない?溜め込んでても良くないでしょう。」
でも...と言い淀む美月に、男は桃花眼の目をゆっくり細めた。
そのミステリアスな雰囲気と男の優しげな声に一瞬、話してしまおうかと思ったが、思い止まって首を左右に振った。
そんな美月に対し、男は嫌な顔をするわけでもなく、今度は何気ない日常会話を振り始めた。
そして何気ない日常会話から、お互いの名前や職業の話へと変わる。男、黒崎は外資系コンサルに就いているらしく、最近、クライアント受注案件における最高責任者、パートナーという役職になったそうだ。