🌹密会🌹
第10章 🌹March(終章)-1🌹
なるほど。
それで高価な物ばっかり、身につけているのか。
本人は全然対したこと無いと言ってるけど、ハードワークって聞くし、繁忙期なんかは凄く大変なんだろうな。
男が高価な物ばかり身につけている理由に納得がいった美月だったが、男に「美月さんは?」と聞かれると、美月は「高校教師をしております。」と小声で答える。
「どうしてそんなに自信なさげなの?胸を張って言える立派なお仕事でしょう。俺も見習いたいな。」と男は目を細めて言った。
優しいなぁ。この人になら、何だか話してもいいのかもしれない。
男の話術にすっかり警戒心を解かれ、美月は心をゆっくりと掻き乱していった。
「あの本当に...つまらない話ですが...」
そう切り出すと美月はついに口を開いてしまった。
男は、ドライ・マティニーを何杯か、時折チェイサーを挟みながら、美月の話に耳を傾けていた。
「成る程ね。貴方だけ、のめり込んでしまったってわけか。」
「そうなんです...。でもそんな事、もう関係無いんです。切り捨てられてしまうので。」
大体を語り尽くしてしまった美月は、そう言うと男に泣き笑いのような表情を見せた後に、俯いた。
「素朴な疑問なんだけどさ、何故、君は彼の言いなりになっているのかな?」
「....え?」
「君が想いを馳せている人は、君の事を未来の婚約者の代わりとしか思っていないわけだ。その程度の男に君は何を遠慮しているのかな?」
「え...あの...どういう事...ですか?」
質問の意図が分からずに思わず聞き返してしまうと、男は口元を歪めて笑みを濃くしながら口を開いた。