🌹密会🌹
第10章 🌹March(終章)-1🌹
翌日、彼女は悪夢に魘されながら目を覚ました。
己の身体を好き勝手に弄び、抱き潰した男は
灰皿に数本の吸い殻を残して、姿を消していた。
美月はすぐさま洗面台に向かった。
そして三面鏡に映った自分の身体に絶句する。
全身に男の噛み跡が、傷跡のように付けられていたからだ。
黎一さんの嫉妬心を煽りたかった。
その為だけに、こんな醜態を彼に見せようとしていたなんて....信じられない。
せめてホテルに入る前に、おかしいって気づければ良かった。
そうすれば、こんな事にはならなかったのかもしれないのに。
後悔が波のように押し寄せる。
だが、終わってしまったことはどうする事も出来ない。後悔先に立たずだ。
彼女は、痛む腰を上げて浴室へと向かった。
シャワーを浴びながら、ボディスープで身体を洗うが、当然昨日付いたばかりの血痕が消える筈もなく、美月は盛大に落ち込んだ。
充満していた煙草の匂いぐらいは消えてくれたかな。
身体を入念に洗い終えた美月は、バスタオルを身体に巻きつけたままリビングへと戻る。
溜息をついたのちに、何気なく壁掛け時計に目をやった美月は、慌てふためいた。
日比谷教頭との待ち合わせまで、さほど時間が残っていないからだ。
大変、急がなくちゃ。
遅刻なんてしたくないもの。
首元までキッチリ締めたブラウスにスカートを履いて、コートを羽織ると、美月は室内を後にした。