🌹密会🌹
第10章 🌹March(終章)-1🌹
「では最初からそう言えばいいだろう。何故買い物が長引いたと嘘を言った?」
身体の芯まで凍るような冷たい言葉が、美月の頭上から降りかかる。
彼女は背中にどっと冷や汗が伝うのを感じた。
しまった。
私、最初に買い物の話をしてたんだった。
「い、いや...その...遅刻した上に、そんなだらしない理由を言ったら、幻滅されるんじゃないのかなって。」
恐る恐る顔を上げた美月は、既に殺気立った険しい顔つきの彼に、苦し紛れでしかない嘘を続けた。
彼は小馬鹿にしたようにフンと鼻で笑うと、美月から視線を外さずに、ゆっくりと口を開き始めた。
「そんな事で私は幻滅等しない。仮に幻滅したとしても私がお前の立場なら正直に説明の上、謝罪するだろう。下手に嘘を吐けば、今のように相手に不信感を与える状況に発展しかねない。ただ...後ろめたい事実がある場合は別だ。私が何を言いたいか分かるだろう?美月。」
そう彼は言い放つと、凄みのある視線を美月の首元へと移動させた。
完全に疑いのかかった眼差しを向けられたが、その疑いをそらすような上手い言い訳も出尽くしてしまった美月の顔面は蒼白だった。
「質問を変えようか。お前は昨晩から今日に至るまで、誰と、どこで、何をしていた?」
やけに穏やかな口調だが、彼の凍りつくような眼差しはそのままだった。
逃れようの無い核心を突いてくる質問に、美月は無言を貫くしかなかった。
彼女は完全にパニックに陥ってしまっていたのだ。